8歳の女の子が2点透視図法を使いこなす!?「マンガを教室で勉強する意味」
「学校でマンガを勉強しても意味がない。」という議論は、ネットの漫画家クラスタでもたまに盛り上がるネタです。特に、これに大きく反論する人も出てこず、誰が敵なのか良く判らないまま、しばらくすると収まっていきます。
学校の効用のお話は強烈に長くなる話なので、今回は触れませんが、私は少なくとも、マンガを教室で勉強する事には、大いに意味があると思っています。少し、条件はつきますが。今回はそれについて書いていきます。(ちなみに、私は学校におけるマンガ教育についても肯定派です。)
最初に、このイラストをご覧ください。
漫画家であったら、良く見る雰囲気の絵だと思います。これは、2点透視図法を用いた、マンガ用背景作画の習作になります。
タイトルにも書きましたが、これは8歳の女の子が描いたものです。プロなら知らず、恐らく、現在漫画家を目指している多くの若い志望者には、このレベルで2点透視図法を使い、アナログの作画が出来る人もそうはいないと思います。現在はデジタル制作ツールも優秀なので、アナログの作画技法を習得する必要はないと考える人もいるかもしれませんが、その事は百も承知しています。
この習作は、以下の条件で描かれています。
1, 夏休みの宿題に提出するために、自分の学校の校舎の絵を描きたいと考えて、描きはじめた。
2, 父が漫画家で、建造物を作画する技術を持ち、それを体系的に教えることが出来た。
1については、こちらがきっかけです。
8才の娘が夏休みに自分の学校の校舎を描きたいと言い出したので、急遽、我が家のマンゼミ背景講座を午前中開催。8才に教えるのは難しい。果たして校舎は夏休み中に完成するのか。 pic.twitter.com/pywvJYoozJ
— 神宮ハヤト (@hayatojingu) 2014, 7月 6
2については、こちらですね。
夏休み、我が家のMANZEMI背景講座。終了です。学校の校舎。8歳の小学生でも、時間をかければここまで描ける。素晴らしいメソッドです。 pic.twitter.com/hfz0w6MGWa
— 神宮ハヤト (@hayatojingu) 2014, 8月 23
これは、私の考える「マンガを教室で勉強する事には、大いに意味がある」状態になる為の条件を満たしています。私の考える条件は以下です。
1, 仕事の品質を上げるために、基礎技術を重要と考え、修得する意欲を持っている。
2, 2つの技術、即ち、マンガを制作する高い技術を持ち、それを教える技術を持つ教師(師匠)と、教材、場がある。
一言で言うと、本人にやる気があって、教える為の2つの技術を持った人に教わることが出来る場合ということですね。当たり前にも聞こえると思いますが、この条件が揃っているところは、意外に少ないです。皆さんは、そんな現場に心当たりがないでしょうか?
今回のケースで、8歳の女の子は、夏休みの宿題をやろうと意欲と持ち、Tweetにもある通り、MANZEMI講座(トキワ荘PJで運営している講座)で、背景作画について体系的に習得したお父さんに教えてもらうことによって、高い品質の絵を描く事が出来たわけです。(実際に一番大変なのは、娘さんに根気よく教えたお父さんだとは思いますが:笑)
学校であっても、どんな教室や師匠がいる環境にいても、本人に学ぼうという強い気持ちや、学ぶことに意味があるという信念がなければ、勉強は意味をなしません。
また、マンガ制作に必要な技術を高いレベルで身に付けたうえで、それを体系的に整理して、教える技術、ここが大事なので2度言いますが、体系的に整理して教える技術を、持ってる場合のみ、教室で教える意味が出てくると考えます。
結果が、8才の女の子が、あのクオリティの絵を描けるようになったということです。
プロとしてやっていきたい人向けののマンガ講習会
2006年の活動開始以来、トキワ荘PJは漫画家支援活動して参りました。(実績のまとめは、こちら。)
最近の3年間に力を入れてきたことの一つは、マンガ制作の講習会です。中でも斉藤むねお・喜多野土竜、両先生によるMANZEMI講座は、3年間に渡り、作画、作話、キャラデザなど多くの講座を行い、東京、京都、大阪で延べ300名以上の、受講生がいます。
この講座の受講者は、マンガ家志望者も多いのですが、既にデビュー済みだったり連載を経験したようなプロも受けにくるところが特徴です。本当にマンガの勉強が必要と気付いたタイミングの人が受けている講座であるということです。
この講座の特徴は、作画に定評のある斉藤むねお先生の技術を、体系的に整備し、講師として大学や専門学校で実績を積んだ喜多野土竜先生が、講座を行うというものです。
斉藤先生は最近「2.5次元マンガ」をTwitter上で発表し、注目を集めました。
秋本治先生、原哲夫先生、藤原カムイ先生という、物凄いメンバーと本郷高校で同じ時代を過ごし、そこで学んだ工業デザインを長年かけて、マンガの作画に合わせて体系化されてきました。2点透視について言えば、最も基本的な分割から、高い技術を必要とする作画法まで、初学者が一定の技術力をつけられるところまで、学ぶ道を確立させました。
冒頭に紹介した8歳児の作画に象徴されますが、理論体系を作って、実習(手を動かせば)すれば、体得できるところまで噛み砕いて作りこんであるマンガ講座となっています。勿論、プロ漫画家の問題全てが講座だけで解決するわけではありませんが、講座を受けて正しい努力さえすればなんとかなることは、うちに限らず、さっさと良い教室で勉強してしまうに限ります。
8歳児の例を出したのは、体系立てて覚えられることについては、愚直にそれをやれば、誰でも出来るようになるということです。正しい努力をするには、正しい方向性ややり方を知ることがスタート地点です。本気でプロとしてやっていきたいのなら、自分らしい、個性ある面白い作品を作る為に、時間を費やすべきです。
MANZEMIの斉藤先生の技術は、プロ作家の方にも評価されています。
すごい! すごいよーっ! .@k_tokiwasou さんの「続•2.5次元マンガ『アタック○○学園2.5D』がすごい!」をお気に入りにしました。 http://t.co/0JAgqIaUh5
— ゆうき まさみ (@masyuuki) 2015, 6月 5
MANZEMI講座では、講座受講者を大ヒット作家にするということは、最初から目指していません。しっかりした教材と講義を準備して、才能差を努力で克服出来る機会を提供することを、目指しています。
現在は、東京で MANZEMI作画プロフェッショナルコース の募集中です。
また、夏には大阪で、背景作画講座を開講する予定中です。
この講座は、開講している我々自身が、「ガチの講座」だと考えています。上記の条件で言う「技術が必要と信じ、本気で学ぶ気がある。」人にしかお勧めできません。半端な気持ちで受けても、恐らく不満が残ると思います。長い間、マンガの世界で食べて行こうと本気で考えている方の受講を、お待ちしております。
[ MANZEMI背景講座 実習用の定規などが見える。 ]
ちなみに、多くのプロ作家の方が、今回書いたように教室で勉強していなかったり、アシスタントとしてプロ作家の現場で学んだり、全く自力でマンガを修得するなどされていると思います。
あくまでこれは、漫画家になる方法のひとつでしかないと思っていますが、作画、作話、キャラクター作りと、本当に多くのことを学ぶことに迫られている現代の漫画家にとって、間違った努力に時間を浪費しないで済むよう、今後も広げていきたいと考えています。
マンガ教育について書こうと思ったら、自分たちの講座を紹介するエントリーになってしまいました。期せずして所謂ネイティブ広告になってしまったので、取りあえず【広告】という表記は入れておかないといけませんね。