漫画の真ん中

マンガ業界データや動向、新人漫画家支援のことなど。

プロ漫画家は日本に何人いるのか?

この仕事をしていると良く聞かれるのが、

「それで、結局漫画家って何人いるんですか?」という質問です。

一般の取材から、作家、編集者さん、果ては経産省のお役人さんや議員さんまで、みんな同じ質問を私にされるんですが、残念ながら、正確には判らないんですね。

 

一番知りたいのは「日本にマンガで食べてる漫画家は、何人いるのか?」ということなわけですが、これを試算する方法がなかなか難しいのです。マンガで食べている人ということが言える人とは、だいたい以下でほとんど抑えられると思います。

 ・商業誌掲載/連載(その単行本印税など)

 ・Web/アプリなどデジタル媒体掲載(原稿料,DL収入など)

 ・企画描き下ろし漫画

 ・宣伝/広告/記事カットなど、その他目的型のマンガ制作

 ・同人誌制作販売

 ・プロアシスタント、塗り師などサポート系

 ・漫画教育関連の教員など

などです。勿論、この中でミックスしている方や、他の仕事(ライターや全然関係のない仕事まで)と兼業している方も多くいます。

 

本当に知りたい数値はなかなか判らないのですが、ここでは参考になりそうな数字をいくつかあげさせていただきます。

 

紙の単行本を出している作家数 

残念ながら2010年までのデータしかないのですが、情報メディア白書によると、紙の新刊のマンガ単行本を発刊した著者数は、2010年で約6000人いたそうです。

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[引用:メディア情報白書]

 この調査、2011年以降は公表されてないようなのですね。どこか別ルートでこの情報手に入れられないかなぁと思います。情報求む。

 

 このデータに少し関係して参考情報があります。「出版月報」によると、年間に発刊される紙のマンガ単行本の総数は、2014年現在約12000冊ほどとなっております。

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[出版月報より]

実に、毎日30数冊のマンガ単行本が発刊されているということになります。

 

この2010年におよそ1万2千冊ほどに達してから、2014年までの5年間は、およそこの水準で安定しています。また、別の資料によると、この刊行されている漫画単行本のうち、10~15%が再収録本、つまりコンビニなどで販売されている廉価本だったり、プレミア豪華版だったりするわけですね。

 

ちょっと定かではないのですが、ここ5年ほどの間、1年間に新刊のマンガ単行本を発刊している作家さんは、約6,000人くらいいるということになるかと思います。 

 

これまではなんとなく、これが一番「プロ漫画家の数」に近いイメージと考えていましたが、現在、最大級のマンガアプリcomicoには100人超、マンガボックスには50人超、他にもめちゃコミックや各種デジタル媒体には、多くのマンガを掲載・連載している作家がいます。また、広告漫画受注などの大手、アドマンガさんにも、多くの「マンガ雑誌には載せてないけどもプロ漫画家」という方たちがいらっしゃいます。先に示した通り、多くのジャンルで「マンガで食べてる漫画家」がいると推測されます。

 

マンガを教えている学校数とその学生数

マンガを教えている専門学校と大学の数も増えました。

 

専門学校の場合、マンガのコースは、マンガ専業コースのほか、イラストやアニメなどの関連しそうなジャンルと合同にしたコースなどの形が多くなります。

例:ナレッジステーション>日本の専門学校>マンガコース

当団体調べでは、例えば、A専門学校の東京校、大阪校をそれぞれ1校と計算した場合、専門学校は約100校ほど、マンガを教えている学校があるようです。

 

大学については、1995年に京都精華大学がマンガコースを創設以来、現在22校の大学・短大がマンガを教えています。

この専門学校100校と大学・短大22校の現役学生数の総計が、推計で約5,000人ほどとなりそうです。高校や社会人学校は除きますが、大学専門学校のなど高等教育機関では、約5,000人がマンガを勉強しています。

 

ちなみに、私が専門学校や美大など漫画家のキャリアやマンガ産業についての講義を行う場合、マンガ学科やコースのある美大だと、だいたい受講生の半分位がマンガコース、半分位が他のコース(日本画とか油絵とか)の学生になります。つまり上記の5,000人以上が学校で学びながら漫画家志望者であると計算しても良いかと思います。

 

同人誌即売会の場合

これは勿論、プロの漫画家の数とは違いますが、愛好者としてマンガを描いている人と、その中に潜むプロの作家さん達の数として、一つの指標になるかと思います。

 

世界最大の同人誌即売会、「コミックマーケット(コミケ)」の前回開催(2014年12月)においては、参加サークル数3万5千・申込サークル数4万8千とのことです。

コミックマーケット87アフターレポート

サークルとは、同人誌即売会に出展する際の単位で、1人~複数人で1サークルと数えるため、申込サークル数以上の同人作家がいるという一つの指標です。この規模の出展数、3日間の来場者が60万人弱と言う巨大イベントが、年間2回行われています。

 

また、2次創作・パロディを主とするコミケに対し、1次創作、つまりオリジナル作品しか売り出すことが出来ない即売会の代表格が「コミティア」です。こちらは、次回開催が出展3500サークルで、開催時の規模感によっては5000サークル位の規模になることもある。こちらは、年4回開催。

そして、このほかにも、コミックシティや各種ジャンル別など、多くの同人即売会が日本全国、及び海外諸国で行われています。(海外では、コンテンツイベントの傍らに、Artist alleyという呼び名で、同人誌即売が行われるケースが多いです。)

 

漫画家志望者は何人?

プロ漫画家の数同様、漫画家志望者の数は知りたい所です。自分の本業を考えても、喉から手が出るほど欲しい情報ですが、これがなかなか試算のアイディアすら良い方法が見当たらないのが現状です。どなたか、良い知恵をいただけませんでしょうか。

 

トキワ荘プロジェクトでは、2011年に「プロ漫画家、及び漫画家志望者の現況を調査する」という目的で『漫画家白書』というものを発刊いたしました。

そのサマリーがこちらです。

www.slideshare.net

 

漫画の業界では、こういった調査が求められてはいるのですが、資金的、技術的になかなか有効な形で実現されません。個人、各機関のご支援、ご協力を賜れれば幸いです。

マンガHONZ更新『セクシー心理学』

マンガHONZ更新しました。今回は、精神科医のゆうきゆう先生が原作でTwitterなどでも話題の『セクシー心理学』です。

「100億円手に入れた人と、事故で重傷を負った人。半年後により幸福を感じていたのは、どっちだと思いますか?」本物の精神科医が語る『セクシー心理学』とは? - マンガHONZ

ネット上のマンガには、本当に色々なパターンがあります。このゆうきゆう先生は、本業があってそれに付随したマンガを出す形ですね。

シンプルに捉えると「宣伝マンガ」のジャンルですが、安易に「マンガにすれば読みやすいからみんな読むだろう」くらいの気持ちで作っても、そう簡単にはいかないのですね。

現在、例えばマンガアプリcomicoだけでも、100を超える作品が週刊ペースで連載しています。

トキワ荘プロジェクト | NEWS | 編集長の部屋(6)中編:comicoで連載中の作品は、どんな話を掲載するかは作家側に決定権があります。

無料だからのと言って、ここにあるマンガを全て読んでいる読者は、まずはいないでしょう。
そういう意味で、メチャクチャ面白くて、本業のPRにもなっているマンガというのは、そうはないんですね。

今後は、マンガHONZでもこのBlogでも、そういったデジタルコミックの事例を紹介していきたいと思います。

Blog再開 2014年度の紙のマンガ市場規模データ

2015年5月、決意も新たにBlogを再開します。何が新たかと言えば、今回過去のBlogを整理してて判ったのですが、3日坊主の癖で3本くらいの埋葬したくなる過去のBlogを見つけ、静かに世の中から消していく作業をしてからの、再度アップというところです。

さて、一先ずプロフィールを一新して、当面は、仮題のまま、マンガ業界関連のこと等を書いていきます。

2014年、紙のマンガ市場まとめ

毎年『出版月報2月号』にて、マンガ市場規模の調査結果が発表されます。これは、所謂マンガ雑誌を「コミック誌」マンガ単行本を「コミック」として、その売り上げや販売点数を発表するものです。

20年分推移のグラフと表が以下です。


[ともに、引用:出版月報-全国出版協会]

紙のマンガのうち、マンガ雑誌(コミック誌)とマンガ単行本(コミック)を合わせた市場規模のピークは、1995年の5,864億円です。95年は、週刊少年ジャンプがギネス記録の653万部印刷を記録した年であり、その記録を出した号は『ドラゴンボール』が最終回でした。このDB最終回以来、紙のマンガの売上は下降を辿り、2011年には4,000億円を割り込みます。実に1/3の売上が減少したことになります。

長い間全てのマンガ業界の指標とされてきたこの数値ですが、インプレス社調べによると2013年に電子出版市場が1000億円の大台に到達し、約4000億円弱の紙のコミック市場に対して、デジタルコミック市場が1/4〜1/5というインパクトまで育ってきました。

トータルでのコミック市場を語る場合、デジタルコミックのインパクトは無視できないものとなってきました。出版社、著者、新規参入する3rdパーティー各社の動きも、デジタルについて既に、「まだ、海山の知れない新しい動き。」から「あって当然、これから必須のもの。」という位置づけに変わって参りました。

その辺り、イベント等で話させていただいたエントリーも、いくつかまとめていただいています。

第5回 菊池健×鈴木みそ:あまり多くない読者とともにマンガ家が生きていくには 「マンガ家一人ひとりの分配がどんどん下がっている中で、」 - DOTPLACE

京都の夜に「マンガと電子化」を考える:「四畳半マンガ家のためのデジタル戦略講座」リポート - ITmedia eBook USER


尚、デジタル側のデータでは、株式会社フーモアの芝辻さんのデータをいくつか引用させていただいております。ありがとうございます^^
マンガの今!電子書籍市場はマンガが牽引するがそれでもマンガ市場全体は減少傾向?スマホシフトで乱立するストア市場と新しいモデルのマンガビジネスとは? | にっぽんのマーケター

ということで、これからマンガ業界の事を諸々つづって参ります。